「未経験向け」医療機器業界への転職
高齢化や医療技術の進歩を背景に成長が続く医療機器業界。景気に左右されにくく、今後も安定した成長が期待され、社会貢献度も高いことから、異業種から医療機器業界に挑戦する人も少なくありません。
「そもそも医療機器業界とは?」「異業種から挑戦できる職種は?」「転職に必要なスキルは?」。異業種から医療機器業界への転職を目指すあなたに、ノウハウをあますところなくお伝えします。
医療機器業界とは?
医療機器とは
MRIにペースメーカー、カテーテル、注射器、メス、ガーゼ…。ひと口に医療機器といっても、その中身は多種多様です。厚生労働省の統計によると、2015年に国内で生産または海外から輸入された医療機器は17万7319品目。その数は年々増え続けています。
このように医療機器には様々な種類のものがありますが、主に2つの切り口で分類することができます。1つは安全上のリスクに応じて法律で定められた「クラス分類」、もう1つは目的や用途による分類です。
【分類その1】クラス分類
医薬品医療機器等法(薬機法)では、人体に与えるリスクによって医療機器を分類し、それに応じた規制をかけるという仕組みを導入しています。これが医療機器の「クラス分類」です。
今の薬機法では「一般医療機器(クラスⅠ)」「管理医療機器(クラスⅡ)」「高度管理医療機器(クラスⅢ、クラスⅣ)」に分けられています。クラスの数字が大きくなるほど、人体に与えるリスクは大きくなります。
クラス分類 | 定義と該当する医療機器(例) | |
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高度管理 医療機器 |
クラス Ⅳ |
患者への浸透性が高く、不具合が生じた場合、 人の生命の危険に直結するおそれがあるもの |
ペースメーカー、冠動脈ステント、人工血管、PTCAカテーテル、 中心静動脈カテーテル、呼吸性体内固定用ボトルなど |
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クラス Ⅲ |
不具合が生じた場合、 人体へのリスクが比較的高いと考えられるもの |
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粒子線治療装置、人工透析器、硬膜外用カテーテル、輸液ポンプ、 自動腹膜灌流用装置、人工骨、人工心肺装置、 多人数用透析液供給装置、成分採血装置、人工呼吸器など |
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管理 医療機器 |
クラス Ⅱ |
不具合が生じた場合でも、 人体へのリスクが比較的低いと考えられるもの |
X線撮影装置、心電計、超音波診断装置、注射針、採血針、 真空採血管、輸液ポンプ用輸液セット、フォーリーカテーテル、 吸引カテーテル、補聴器、家庭用マッサージ器、コンドームなど |
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一般 医療機器 |
クラス Ⅰ |
不具合が生じた場合でも、 人体へのリスクが極めて低いと考えられるもの |
経腸栄養注入セット、ネプライザ、X線フィルム、 血液ガス分析装置、手術用不織布など |
日本医療機器産業連合会のホームページなどをもとに作成
【分類その2】目的・用途による分類
法律で定められた分類ではありませんが、目的や用途による分類も一般的。大きく分けると、病気やケガの診断に使う「診断機器」と、病気やケガの治療に使う「治療機器」、それ以外の「その他」の3つに分類されます。
診断系 医療機器 |
病気やケガの診断に使うもの |
---|---|
画像診断システム、画像診断用X線関連装置および用具、 生体現象計測・監視システム、医用検体検査機器、施設用機器 |
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治療系 医療機器 |
病気やケガの治療に使うもの |
処置用機器、生体機能補助・代行機器、治療用または手術用機器、銅製器具 | |
その他 医療機器 |
上記以外のもの |
歯科用機器、歯科材料、眼科用品および関連製品、衛生材料、 衛生用品および関連製品、家庭用医療機器 |
日本医療機器産業連合会のホームページなどをもとに作成
市場規模は2.7兆円 安定して拡大中
高齢化や医療技術の進歩を背景に、国内の医療機器市場は成長が続いています。厚生労働省の薬事工業生産動態統計をもとに計算すると、2015年の国内の医療機器市場の規模はおよそ2.7兆円。2010年からの5年間で18.7%拡大しました。

人の健康や生命に直結する製品を扱っているだけに、景気に左右されにくいのもこの業界の特徴の1つです。上のグラフを見ても分かる通り、リーマンショックの影響で景気が悪化した2009年も医療機器市場は落ち込むことなくほぼ横ばい。翌年からは成長を取り戻しました。
外資系企業が強いのも医療機器業界の大きな特徴です。2015年の国内市場2.7兆円のうち、海外からの輸入は1.4兆円とほぼ半分を占めています。ただし、診断機器や低侵襲医療に用いられる機器など特定の分野では世界でトップクラスのシェアを持っている日本の医療機器メーカーも数多くあります。
未経験から医療機器業界に転職することは可能か?
結論から言うと、今まで違う業界で働いてきた人でも医療機器業界に転職することは十分可能です。
メーカーや商社の営業職は未経験OKが多い
医療機器業界で未経験OKの求人が多い職種として挙げられるのが、医療機器メーカーや医療機器商社(代理店やディーラー、卸売業者とも呼ばれる)の営業職です。
医療機器営業の主な仕事は、医療機関を訪問して製品を提案し、医師などの医療従事者に対して製品の特徴や使用法といった情報を提供すること。製品の正しい使用をサポートするため、医療従事者にデモンストレーションを行ったり、手術に立ち会ったりすることもあります。
メーカーと商社、どちらの営業職も製品をPRしてその普及を図るという点では仕事内容は同じ。ですが、扱う製品や営業のスタイルには違いがあります。
メーカーの営業職が自社でつくった製品のみを扱うのに対し、さまざまなメーカーから製品を仕入れて医療機関に販売する商社は扱う製品も多岐に渡ります。このため、メーカーの営業職は自社製品の営業活動に特化しますが、商社の営業職は数ある製品の中から医療機関のニーズに応じた製品を提案する活動が中心です。
商社を通じて製品を販売しているメーカーの場合、ライバル製品も含むラインナップの中から自社製品を推してもらえるよう、商社の営業職と良好な関係を築くことも重要な仕事となります。
- 複数製品で国内トップシェアの上場医療機器メーカー/年収600万円~
- 低侵襲性治療分野におけるリーディングカンパニー/年収400~600万円
※営業職の志望動機の書き方はこちら(転職Hacks)
CRAとして医療機器の治験に携わる
医薬品や医療機器の開発をサポートするCRA(臨床開発モニター)も比較的、未経験の人にも門戸が開かれている職種です。CRAの主な仕事は、医薬品や医療機器の治験(実際に医薬品や医療機器を人に使ってみて安全性や有効性を確かめる試験)がルールに沿って適切に行わよう、全体を管理すること。具体的には、実際に治験が行われている医療機関に足を運び、カルテと治験データを突き合わせて確認するなどします。
医療機器メーカーがCRO(開発業務受託機関)に治験業務を外部委託するケースが増えており、そこで働くCRAの採用も活発です。CROの業務のほとんどは医薬品に関するものですが、医療機器が占める割合は年々大きくなっています。CROの中には医療機器の治験に力を入れているところもあり、CRAとして医療機器開発に携わるチャンスも広がっています。
- 東証一部上場企業グループのCRO/年収430~550万円
- 研修制度が充実したCRO/年収340~400万円
エンジニアなら製品開発職やサービスエンジニアも
エンジニアなら、医療機器メーカーの製品開発職として活躍する道も。医療機器は多種多様な技術の集合体。回路設計や機械設計、ソフトウエアといった技術・技能を持っている人なら業界は問わないといった求人も少なくありません。
医療機関を訪問して機器の保守・点検といったメンテナンスを行うサービスエンジニアという選択肢もあります。
- バイオ機器の世界的企業/エレクトリカルエンジニア/年収600~900万円
- 医用電子機器トップシェアの東証一部上場メーカー/生体情報モニタの製品開発/年収460~700万円
- 世界最大手の外資系医療機器メーカー/フィールドサービスエンジニア/年収500~900万円
未経験から医療機器業界への転職に必要なスキルは?
医療機器営業は営業経験が求められる
医療機器業界で未経験OKの求人が比較的多い営業職ですが、そのほとんどは次の2つの条件を必須としています。
- 営業経験
- 普通自動車運転免許
業界未経験OKとはいえ、中途入社の営業職に求められるのは即戦力となる営業スキル。業種問わず営業経験があれば応募可能な企業がほとんどです。
運転免許が必須とされるのは、営業職の移動手段が車のため。納品業務も行う医療機器営業に車は欠かせません。
医療機器営業は医師や看護師といった医療従事者を相手とする仕事。「専門知識がないから務まらないのでは…」と心配する人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。疾患や治療に関する知識は、研修や業務を通じて身に付けられます。
何よりも大切なのは、高い倫理観とコミュニケーション能力。医療機器は医薬品と違い、医療従事者が直接手を動かして使うものです。手術で使う機器では医師と治療方針の検討を一緒に行うなど、医師とのコミュニケーションも深くなります。
また、実際の使用感をもとに改良を重ねていくのも医療機器の特徴です。「使った感じはどうか」「不満なところはないか」など本音を引き出し、より良い製品開発につなげていくのも医療機器営業の重要な役割です。
CRAに応募可能な職種は看護師やMR
治験をサポートするCRAも、未経験の場合は次のような職種を経験していることが前提とされることがほとんどです。
- 看護師
- 薬剤師
- 臨床検査技師
- MR(医薬情報担当者) など
CRAの仕事には、疾患や医薬品・医療機器に関する専門知識、医師や看護師といった医療従事者との折衝能力が必要です。上の職種はこうしたスキルに通じるものがあるため、応募の条件として指定される傾向にあります。
開発職は知識・技術がベースに
開発職で重視されるのは、言うまでもなく専門知識や技術・技能。「電気・電子回路設計経験◯年以上」「精密機器設計経験◯年以上」といった条件が指定される求人もありますが、機械や電機の基本的な知識があれば経験は問わないという求人も少なくありません。
医療機器業界は安定しており、社会貢献度も高い、チャレンジしがいのある業界です。「医療機器転職BiZ」は医療機器業界を専門とした転職エージェント。もちろん、未経験から挑戦できる求人も保有しています。
医療機器業界で働くことに興味を持った方は、
ぜひお気軽にご相談ください。
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